[insoluble] (読み:インソルブル) クロスステッチとか手芸とか料理とか写真とかバイクとか動物園とか博物館とか水族館とかが好き。読書の日記です。 よろしくお願いします。

[insoluble] 読書と刺繍日記

【読書062】「タンパク質の一生: 生命活動の舞台裏」

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏」(永田 和宏/岩波新書)


タイトル通り、タンパク質の製造から成熟、輸送、品質管理から分解までを一通りの流れで解説する一冊。

生化学の知識、最低でも有機化学の知識がないと理解するのは難しいのではないかと思う。
前半部分は教科書のように親切に記されてはいるが、初心者が入門書として読むには専門的すぎる気がする。
逆に、一応大学で生化学を学んだ方にとっては、前半部分は目新しいことが少ないので、少々つまらなく感じるかもしれない。
生化学が好きで、これから学ぼうという大学生や、ある程度自力学習したことのある社会人の方向け、といった感じである。

読む人間を選ぶ一冊ではあるが内容はなかなか面白い。

●生物は精度の高いものを作るよりも精度が低くても大量に作って使わなかったものは分解してしまうという戦略を取る場合が多い。

精度が低くバリエーションに富む中で、意外な効果が発揮される場合もありそうだ。
このほか、ヒートショックプロテイン、品質管理などなど語られており、個人的には学生時代に学んだことの、良い復習になった。

この手の本は読むのにどうしても時間がかかるのが難点だ。通勤列車内、しかも片道のみの読書とはいえ結局一週間くらいかかってしまった。

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  1. 2013年07月31日 10:02 |
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【読書061】「丕緒の鳥」

丕緒の鳥 十二国記」(新潮文庫/小野不由美)

テーマは国の荒廃と民の足掻き、とでも言おうか。
「王が居れば国は安定する。」
これが絶対の天の理である十二国記の世界で、王が倒れる間際、あるいは空位の時代にあって、荒廃していく国土や歪みと戦う、民草を描いた短編が四編収録されている。

「丕緒の鳥」
表題作。百数十年、五人の王に仕え羅氏の中の羅氏と名高い丕緒は慶国の新王即位に伴う大射の準備を命じられた。
大射に用いる陶鵲の作成を通じて、失った親しい者たちの真意に気付いてゆく。
丕緒は技術者であり職人であり表現者であろうとした人間であり、王が立ち代り入れ替わりする中で失意の中にいた人間なのだろう。

「落照の獄」
国が傾いていく最中にある柳国で発生した大量殺人をめぐるお話。
時期的には前作の「華胥の幽夢」における「帰山」の前後だろうか。
柳国の司法をつかさどる秋官、瑛庚を中心に王の命により一度は凍結された死刑制度の再開を巡る議論。
現代における裁判制度にも通じる議論で読後の苦々しさが増す。

「青条の蘭」
どの国が舞台だろうか。冬の厳しさが描写されていることから、北の国と想像される。
先王の圧政とその後の空位で国の荒廃が進む頃、国内では山毛欅(ブナ)の木が石化する奇病が蔓延しつつあった。食糧としても木材としても、利用価値が少ない山毛欅。だが硬化した山毛欅は木材として高値で売れるため、人々は利益を享受した。
そして疫病は広がり、やがて深刻な事態をもたらす。
山における木の実が減り、動物たちの食糧が減少したことで、熊や鼠は里に降りて畑を荒らす。山から木々が減り保水力を失ったことによりもたらされる春の雪崩、夏の乾燥。
疫病に対抗すべく躍起になる標仲。そして得た「青条の蘭」…。

「風信」
陽子の先王、女王舒覚の時代の末期。全ての女に対する国外追放令が出されたころ。
軍による虐殺で父母、妹、祖父と家族失いながら生き延びた蓮花は、摂養の街で暦を作成する監視である嘉慶のもとで、下働きとして暮らすことになった。
トラウマの克服には時間がかかる。そういう意味でも蓮花はスタートラインに立ったばかり。
「青条の蘭」も同様だが、希望と余韻を残す。

全体に慶国はよく描かれるなぁという印象がある。
女王が続き、そのどれもが在位が短く、荒れた国、動きのある国として描くのによい設定を持った国なのかもしれない。
そろそろ、長編が読みたいです。

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  1. 2013年07月28日 09:51 |
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【読書060】「0歳児がことばを獲得するとき―行動学からのアプローチ 」

0歳児がことばを獲得するとき―行動学からのアプローチ 」(正高信男/中公新書)


タイトル通り、生まれた子供が言語を獲得していく過程について、心身の両面からまとめられている。

月齢の異なる幼児の比較、月齢の同じくらいの幼児の比較に始まり、ヒト以外の霊長類との比較研究、あるいはヒト以外の霊長類同士の比較など、科学的に書かれている。
書かれている内容も、実験結果、その考察、他の知見とバランスが良い。

例えば、0歳児はどれぐらい人の声を聞き分けているのかという問題に対して、0歳時を対象とした実験はもちろんだが、同じ霊長類であるサルを用いた実験結果の紹介がある。
母ザルの声が出産してから何日目に区別できるようになったかについて見ると、最も早い子ザルで14日、最も遅いのは41日を要した。(中略)ところが、同じ八頭を受精後何日目に区別できるようになったかという観点から分析すると、最も早い子ザルで190日目、遅い子ザルで202日目となり、差は12日と大幅に短縮されることがわかった。(9ページ)

ヒト、という特殊な対象を扱う以上、できる実験には限度があるが、その限度をカバーするように行われるヒト以外の霊長類研究は、ヒトを理解するうえでも参考になる。

この他、人は声帯を震わせることで発音するが、では喉の構造にはどんな差があるのか。
乳児の誤嚥防止を優先したチンパンジー喉から、発音をするための大人型の喉へ、その変化はいつ訪れるのか。

まさに人間を扱った科学、霊長類研究であろう。

1993年のの発行なので、やや古いのかもしれないが、新説を取り上げているわけではないので、気にせずに読めた。
近くに新生児がいたら、試してみたくなるような内容が多数まとめられている。

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  1. 2013年07月25日 10:44 |
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【読書059】「死ねばいいのに」

文庫版 死ねばいいのに」(京極夏彦/講談社文庫/同僚より借受)


死んでしまった女アサミの事を、関係者に尋ね歩く無礼な若者ケンヤ。
ケンヤと関係者との対話形式で話が進む。
ジャンルとしてはサスペンスなのかなぁ。

「オレ、バカなんでほんとわかんないんっすけどー」と定型文のように繰り返すケンヤが非常に説教くさい。
各話が同じお話の焼き直しのようで単調。最期まで読むのはやや苦痛に近い。結末もまぁ読めてしまう。
京極作品としても、ただの小説としても、正直残念な出来栄えだった。

ただ、人間観察的な面白さはあって、生前のアサミを取り囲んでいた人間たちは、皆、己の事しか考えていない、自己中心的な人物として描かれている。
ケンヤの「アサミの話しを聞きたい」という問いかけに、自分語りだけで返すような人間たちばかりだ。
結果、生前のアサミはケンヤの目を通してしか語られない。

人間関係は双方向だ。一方方向ではありえない。
ケンヤは「アサミは幸せであった」と主張するが、友達もおらず、自己中心的な人間に囲まれ、幸せであり続けられるのはやはり一般的な精神状態ではないのではないかと思う。
正常な人間関係を気付けていないのはお互いなのだ。

生前のアサミはどんな人間だったのだろう。
想像し始めると何となく重苦しい気分になる。

***

最近さくさく本を読んでる。
良い傾向、良い傾向。
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  1. 2013年07月23日 10:33 |
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【読書058】「リスボン 坂と花の路地を抜けて」

リスボン 坂と花の路地を抜けて」(青目海/KanKanTrip) ※「本が好き!」様より献本いただきました。


ポルトガルの小さな古都リスボン。ヨーロッパ最後の田舎と呼ばれ、花咲き誇る町。
上品な文章で、穏やかな語り口。リスボンへ行ってみたくなるというよりは、リスボンという町、ポルトガルという国に住んでみたくなる。観光本やガイド本ではなく、どちらかと言えば街歩き本に近いだろうか。

掲載されるたっぷりの写真を眺めながら、日本には無い開放感を生み出している原因はなんだろうと考える。
広く平らな道とまっすぐそそり立つ建物の壁面。青々とした胡椒の木。
白壁と赤茶の屋根はヨーロッパ的だ。

タイトルにもある通り坂の多そうな町だ。長崎の様な急勾配、段差的な町ではなく、やや急な丘の上にある町とでも言おうか。
花雲一つない青空というのは少ない町なのかなぁと思った。薄曇りや、青く晴れていても雲の多い空が目立つ。

文章も写真も想像の余地を多分に残していて、少しリラックスしたい時、午後のティータイムを楽しみながら読めば、リスボンの町を訪れたような気分に浸れそうだ。

ちなみに、日本人が桜を愛するように、ポルトガルの人々に愛されるジャカランタはこんな感じ。

一面に咲き誇る様子はさぞ綺麗だろう。

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  1. 2013年07月20日 10:03 |
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